2012年5月15日火曜日

第3回 UC Berkeley, Stanford(3/3) - 理学部生海外派遣プログラム - 理学の話


第3回 UC Berkeley, Stanford Part.3

8.感想

竹田 宏紀(数学科4年)

私が渡航制度に応募した理由は、論文からは読み取ることが出来ない米国の理学研究、主に数学研究の雰囲気をこれからの自分の研究のために肌で感じることであったが、セミナーの参加や現地の学生との交流などによって多くの貴重な経験を得ることが出来た。

まず、両数学教室の雰囲気に関しては日本の数学教室より開放的であるという印象を私は受けた。かなり小規模の大学院セミナーも web page 上に予告され、誰でも自由に参加することが出来ることになっているが、そのセミナーの多くは透明のガラスのドアを大きく開けて、そばを通る人にも見える形で行われていた。また、多くの研究室で研究者が板書を使って激しく議論をしている様子が頻繁に見受けられて、日本の大学特有の静かな雰囲気を感じることはなかった。大学外の人に向けた講演や催し物も頻繁に行われたりするなど、外部と接触する機会が非常に多いようである。特に、山本先生のお話によると、Stanford 大学では大学の休業期間の3ヶ月間に企業で働く数学者もいるそうである。私立大学が有力であるアメリカの数学ならではと感じると同時に、数理的な問題やアイデアを大学内外からかき集めてくるという姿勢は学ばなければならないと私は強く思った。

他の印象として、女性が多い、学部生のレベルが低い、哲学や経済学との交流が深い、等の明らかに異なる特徴があったが、個人的には言語的な壁を少し感じることがあった。論理的な厳密性は共通であるが、数式の意味を説明する際には英語圏特有の哲学を用いて説明する場面があり、言葉の意味は掴めてもセミナー中に自分にとって腑に落ちない箇所があった。論理を追うだけでなくその背景を学ぶためにも英語が重要であることを認識するよい機会となった。

次に、各大学の全体的な印象を振り返ってみる。UC Berkeley では、広いキャンパスに学生の活気が溢れていた。思い返してみると、Sather Tower, Sather Gate, 大学の Dormitory, International House などの建物の間を長い時間をかけて歩いたにもかかわらずまだキャンパスの北部に私は足を踏み入れていないし、キャンパス外の MSRI に行く途中には多く大学の研究所があった。そして、専門書や整った字で埋まったノートをバックパックに詰めて歩く学生をそこでよく見かけた。また、一つ一つの建物は、ゆったりとした空間的に余裕がある部屋をいくつも抱えていて、どの部屋も天井が高いという特徴があり(Dormitory の部屋でさえも。)、特に Jones 先生の研究室の大きな窓から見えるサンフランシスコを一望する風景は私にとって忘れられない格別のものであった。

一方の Stanford では、落ち着いた雰囲気が漂っていた。人の名前の付いた同じような赤屋根の建物が Memorial Church を中心に平然と並んでいて、迷路のようであった。カフェではゆっくりと一人で本を読む学生をよく見かけた。また、キャンパスの至るところに、ロダンなどの彫刻が静かに置かれていた。

このようにキャンパスの雰囲気は対照的であるが、どちらの先生も学生も私たちに大変優しく接していただいた。Jones 先生は私のために時間を割いてくださったし、Discussion の相手の学生たちは、初対面にも関わらず私たちは何度も食事に誘ってもらい、時には車で Guest House まで送ってくれた。UC Berkeley で地図を片手に迷っていると、向こうからこちらに話しかけて目的地を教えてくれた学生もいたし、Stanford でもよく道を教えてもらった。知らない大学で多くの親切に出会い、これからの研究の参考となる経験を得ると同時に、とてもよい時間を持つことが出来た。現地でお世話になった方々に感謝すると共に、このような訪問の実現にご尽力くださった国際関係室の方々をはじめ理学部の先生方に感謝を申し上げたい。ありがとうございました。

野地 俊平(物理学科4 年)

理学部海外渡航制度は、学部生として海外の大学を見学できるよい機会である。今回の渡航先である UC Berkeley、Stanford 大学は、物理学科の評価が高く、とりわけ素粒子原子核物理学の研究活動が予てより活発であり、物理学の発展に共に極めて重要な寄与をなしている。今後の研究に関して大いに視野を広げられることを期待し、今回の海外渡航制度に参加した。

UCB の野村泰紀先生、村山斉先生、Stanford の山本喜久先生、SLAC の釜江常好先生、田島宏康先生から研究内容をうかがうことができ、それ以上に大学院・研究生活についてのお話をうかがうことができたのは、非常に貴重な経験であった。特に、大学院の講義ではかなり高度な内容が取り扱われること、議論していて分からないことがあっても猛勉強して2日後にはその箇所を完璧に仕上げるほどに皆パワフルであること、皆ほぼ休みなく研究に没頭して激しい競争のうちに残っていくことなどを聞き、非常によい刺戟になった。また、大学院では、学生の授業料と生活費が教授の研究費から負担されるということであり、以前からも多少聞き知ってはいたものの、改めて聞くと経済的には魅力的に感じられた。サンフランシスコ湾の眺めのよいUC Berkeley、赤い屋根の建物と中心部の聖堂が印象的な Stanford 大学は、ともにすばらしい環境であった。


どのようなバーンズに起こったと貴族大学

また、学生の皆さんと接し、大学生としてどのようなことを考えているのか、特に進学や就職に関してどのように考えているのかということを聞くことができたことも、非常に貴重な経験であった。学部では、例えば計算機科学と日本語、というように専攻を2つ持つことも多いとのことであり、実際に計算機科学専攻のアメリカ人の学生が流暢な日本語を話していて驚いた。異なる環境にある同世代の学生との交流を持てたことで視野が広がったように感じることができた。

この海外渡航制度では充実した日々を過ごすことができました。お世話になった皆様に心から感謝申し上げます。

辻 直人(物理学科4年)

僕にとってこの海外渡航制度は次の意味で大変意義深いものでした。

ひとつは自分に足りないものをたくさん見つけることができた点です。物理の専門知識とか英語力というよりも(もちろんそれらも足りてませんが)、自分の根幹の部分、自分とはこうだ、こういう考え方なんだということを支える確乎たるものが欠けていることがわかりました。それが確立すれば人間的な厚みが増し、人から信頼を得、尊敬されることにつながるのだと思います。自分と国籍や文化の全く異なる人と初対面で会い、相手に自分のことを認めてもらおうとしたときに、そういったものが足りないことを痛感しました。この海外渡航のなかで出会った人たちは多かれ少なかれ自分の基準軸をもっていて、それをもとに自信を持って自己主張することができていました。僕も国際的に通用するものの見方・考え方を身につけ� ��その土台となる知識や経験を蓄積していかなければと思うようになりました。これは研究者として国際的に活躍しようと思ったときに必ず必要になるはずです。大学院に入学する前にこの点に気づけたことは僕にとって大きなことでした。

もうひとつは自分の知っている世界が確実に広がった点です。僕は日本でずっと勉強を続けてきたせいもあって、世界のことを知らなさすぎました。上には上がいるといいますが、その上の上を少し垣間見ることができたのではないかと思います。とても刺激になりました。また日本とアメリカの教育制度や研究環境の違いを知ることができました。研究者になろうとするなら海外での研究経験は必須だと思いますが、将来海外で研究をしようとする(その願望は今回の海外渡航で格段に膨らみました)ときに今回得た情報が生かせそうです。自分で調べればわかるようなこと以外に、アメリカの現役生の生の声からしかわからないことまで知ることができ、貴重な経験をすることができました。日本の大学に留まっていてはなかなかこ� ��ような経験をすることができないと思います。

最後に、とても充実した楽しい10日間を過ごすことができました。今回のメンバーで行くことができて本当によかったです。また現地でたくさんの人と出会って交流を深めることができました。こうした経験ができたのも多くの方の協力のおかげです。本当にありがとうございました。

塚本 裕介(天文学科4年)

私が今回の海外渡航に応募した理由はこの渡航は Stanford, UC Berkeley という世界でも最高レベルといわれるアメリカの大学の研究環境や学生のレベル、研究予算の大きさなどをこの目でみるまたとない機会であると感じたからでした。

実際に UC Berkeley、Stanford を訪問させていただき最も強く感じたことはこれらの大学と比べても日本の大学(特に東大)のレベルは遜色ないということでした。この渡航では実際にあちらの学生、院生の方と話をし、学部の講義を聴講させていただく機会がありましたが学生のレベルや講義の内容も日本で私が受けてきた講義と大差ないように感じました。むしろ学部レベルでは日本の学生のほうが学力も高く、また卒業研究などの経験を通じて早くから研究を始めるために研究する能力もあるのではないだろうかと感じました。

しかし、現状では日本はアメリカよりも研究成果が上がっていないように感じられます。この理由をこの渡航中私なりに考えてみたところ以下の3 つが理由として考えられました。

1つ目はアメリカの大学院には世界中から優秀な学生が集まるということです。訪問した2つの大学はどちらも西海岸ということでアジア系の学生が多く、UC Berkeley では学生の半分近くがアジア系の学生なのではないかと思うほどでした。彼らはそれぞれの母国で最上位レベルに入っていた学生たちだそうです。このように海外からおおくの優秀な頭脳が集まることでアメリカの研究水準が高められていると考えられます。

2つ目は世界的な研究水準をたもっている大学が多くあることがあげられます。今回の訪問では先にのべた2校を訪問したのですが電車で1時間強の移動圏内に世界的に有名な大学が2校もあることは日本では望むべくもありません。


WOTの年齢はU大学に行かなければなりませんか

そして、最後に大学院教育の充実があげられます。アメリカの大学院は日本の大学院に比べて講義の占める割合が比較的高いところが多く、また講義内容も日本の大学院に比べてよく準備されているように感じました。日本の大学、大学院講義の多くが週に1回行うだけなのに対してアメリカでは週に2回とディスカッション1回というように複数回行われる講義が多くかなり高度な内容まで講義されるようです。講義が充実していることが必ずしも高い研究レベルと関係があるわけではないという意見もあるでしょうが大学院が重点化され昔のように必ずしも粒がそろった学生が入学してくるわけではない日本の現状を考えると大学院教育のあり方を見直す必要があると感じました。

今回の渡航でアメリカの大学、大学院の様子を見る機会を与えていただくことで日本の大学、大学院の優れている点、問題な点を考える良い機会となったと思います。最後になりましたがこのようなすばらしい機会を与えてくださった教授のみなさま、国際交流室の五所さんに感謝したいと思います。ありがとうございました。

鮫島 昌弘(天文学科4年)

今回、理学部海外渡航制度を使って UC Berkeley とStanford 大学の訪問に行ってきました。キャンパスを歩いて気づくことはまず、アジア系(特に中国人)の生徒が多いということです。アメリカンドリーム的な発想が強く、家族や親戚が一丸となって留学を支援しているようでした。そして彼らは母国の将来を背負っているという意識が強く、のんびり日本で育ってきた僕には驚きでした。さらに、人種も様々で色々なバックグラウンドの生徒が多く、日本とは大きく異なっていました。

また、学生が非常によく勉強しているという印象を強く受けました。キャンパス内の芝生の上で勉強している生徒も多く、また授業の合間にも座り込んで勉強している姿を見るとまるで二宮金次郎であり、刺激をうけました。確かに東大は日本ではトップかもしれませんが、世界にはまだまだ優秀な生徒がいて日々努力していると痛感させられ、自分ももっと頑張らないといけないと思いました。

様々な研究施設を見学していると、産学連携が非常に進んでいて、それに比べると日本はまだまだで、今後の日本の大きな課題の1つになると思います。アメリカの予算の多さなどにもよると思いますが、基礎研究にお金をかけるという習慣が日本に比べて根強く、企業が寄付していて様々な研究施設や図書館などがありました。すぐ社会に還元できないようなものや、成果がなかなかでないものでもいつか大きな breakthrough につながるかもしれないので、これは日本も学ばなければなりません。

アメリカの生徒と話していて感じたことはアメリカの大学はダブルメジャーが主流で、理系の生徒も経済の関心のある生徒が多く、これも驚きでした。specialist である前に generalist であれ、ということなのでしょうか。

ある院生とお話できる機会がありましたが、その方は学部は Harvard で院から UC Berkeley に来ていた方でした。日本の場合、同じ大学の院に進むケースが多く、これも大きな違いだと思います。院生は非常に大事にされるとのことでしたが、ポスドクの競争は激しく、これは日本でも変わりません。将来、研究者を目指すか、就職するかといった悩みをあちらの大学生も抱えているようでした。

今回の訪問を通して、日本にいると感じることのできないこと、例えば日本とアメリカの教育制度の違い、日本の科学研究の問題点、海外の研究室の様子・考え方など様々なことを肌で感じることができました。

最後に、このようなすばらしい機会を与えてくださった国際交流担当の先生方、引率してくださった五所さん、UC Berkeley, Stanford で案内してくださった先生方、お世話になったすべての関係者の方々に深く感謝しています。


両親のために翻訳する子どもたち

稲垣 秀彦(生物化学科3年)

僕がこの海外渡航に参加したいと思ったのにはいくつか理由があります。まず同世代で同じ分野に興味のある学生と将来のことや科学について話したかったことがあります。僕は東京大学発明コンクールで入賞した関係で2年生の時に上海で行われた WEC2003 に参加する機会がありました。その際、多くの現地の大学の学生が歓迎してくれ交流する機会がありました。ただ、どうしてもそのような交流に参加する学生は国際交流に興味のある文系の学生が多かったため、お互いの文化の話、生活の話はできても、サイエンス・将来の進路の話などはできませんでした。同世代と言うこともあってそれだけでも十分に楽しく充実した会話ができましたし、いまだに連絡が続いている人もいますが、同分野の学生だったらもっと互いに充実した時間が過ごせただろうと思いました。このように自分で、もしくは幸運にも何らかの企画で海外に行ったとしても、理学部の渡航という形で無いと理系学生同士でディスカッションの機会を得ることはほぼ無理であると思いこのチャンスを利用したいと思いま� ��た。また、僕のいる分子生物学の分野で研究者になるならば、いつかはアメリカに行く可能性が高く、実際にアメリカの大学や研究室の雰囲気や生活を見たいと思っていました。それと同時に、日本の大学制度に批判的だったのでアメリカの大学はどうして日本と違うのか、本やホームページからはわからない生の学生や教授達の姿を見たいと思いました。UC Berkeley と Stanford 大学に興味があるラボがいくつかあったので、そこを見てみたいというのも動機のひとつでした。以上のような理由からこの海外渡航に参加しました。

そして実際に海外渡航に参加し、最初に思っていた以上の経験を得ることができました。まず想像以上に現地の学生と交流できたこと。これはディスカッションした学生もそうなのですが、それ以上に各ラボに訪問し、そこで聞いたラボ内での生活の話が非常に刺激的でした。例えばアメリカではPh.D. をとってもポスドクになっても就職することが普通にできるというのには驚かされました。同時にむこうの学生も日本のラボの様子などに驚き刺激を受けたようでした。また、目的でも述べたようにアメリカの大学の授業・院生の雰囲気、生活の様子がかなり分かりました。学生としてはどのような授業が行われるかは非常に興味があるわけで、ディスカッションが活発に行われる授業形態には感心しました。ディスカッションをまとめ進行するPI もすごかったですが、誰1人寝ずにノートをとり、下らないことでも恥じずに質問する学生達に文化の違いを感じました。大学周辺のアパートメントでの生活、食事などでも日本と異なるところがたくさん見つかりました。通学に時間をかける日本がある意味異常に見えました。その一方で、大学の授業料、ドミトリーでの生活費など日本のほうがよいところもみつかりました。大学院生に授業料を払わせる日本の方式はよくないと思っていましたが、アメリカの税制や大学の財政制度の違いを考えると学部の授業料が安い日本の方がよいようにも思えました。また日本とアメリカで変わらないところも分かりました。授業の形態・雰囲気こそ違え、中にいる学生の質やラボの雰囲気、施設などがほとんど変わらないように思えたことはひと つの驚きでした。同じように進路のことや実験が進まないことで悩む姿は同級生と一緒でした。では、どこでアメリカと日本の研究に差がつくのかということはなぞのまま残りました。あえていえば、似た分野の研究室が集まっておりその横のつながりが強いと思えたことくらいです。もちろん興味のあるラボに訪問しPI と話、質問できたのもよかったです。それに UC Berkeley にある世界最大の大学の建物で中に恐竜の化石が展示されている Valley Life Sciences Building を初めとした立派な建物と広大なキャンパス、調べきれないほどの Department とその中にあるラボの数には単純に驚かされました。これだけの物を作る財力と、人材を持った大学が10 個以上もあるアメリカという国のすごさを痛感しました。

このような経験を通し、まず個人的なことですが、将来アメリカで研究者として過ごすときの様子がしっかりイメージできるようになりました。また、なにかとアメリカの研究施設や大学の素晴らしさを語る文書も多いですが、中にいる人間と話をしてきたことで、そのような文書に惑わされない自分なりの日米の良さの評価ができるようになったと思います。僕の学科ではアメリカを意識している人も多く、そのような人たちと話すときに別の見方を提供できるかなとも思います。そして、同じようなことを考え悩んでいるアメリカの学生達との交流を続けていければなと思います。

以上、最後になりましたが、海外渡航でしかできない多くの経験をさせて下さった理学部に感謝します。


酒井 由紀子(生物学科動物学コース3年)

私が海外渡航制度を志望した理由は、アメリカと日本の研究環境・理科教育環境がどのように違い、その違いが何から生じているか、またアメリカの学生が将来についてどのように考えているかを知りたかったからだ。生命科学においてトップを走るアメリカの研究環境はどれだけ優れているのか? 日本の大学院生を悩ます就職やポスドク問題はアメリカではどうなっているのか? このような問題意識を持って海外渡航制度に参加して私が強く感じたのは、これらの違いには、大学制度だけでなく社会構造の違いが大きく関与しているということだ。アメリカのTop 10 と呼ばれる大学はUC Berkeley を除けば全て私大で、教授は大学から受け取る研究費だけでなく、研究機関や財団から研究費を集めなければいけないため、研究者は良い研究をするだけでなく、研究費を集められる能力も必要となる。そして、Ph.D. プログラムに入る学生の学費と生活費は教授の研究費の中から出すことになるので、院生と話してみると、研究や学問に対してプロ意識を持つ学生が多いと感じた。中には財団から奨学金を得てPh.D. プログラムに入る学生もいて、これはアメリカ社会に古くからある、富を築いた人々が学問に貢献しようする風潮があるからこそ可能なシステムだと思う。また、アメリカでは大学から大学院に進学する際にほとんどの学生が大学を変えるらしいが、日本では研究環境の整った大学が非常に少ないため、新しい環境や考え方で研究をする機会があまりない。大学制度だけではなく、根本的な社会構造の違いが研究の場面でも反映されていて、興味深かった。

2つ目に印象深かったことは、アメリカの良いところだけでなく、日本の研究環境の良いところも改めて実感できたことだ。LBL で、最近はバイオブームのせいで純粋な物理への予算が削られているから、施設が生命科学に役立つことを謳うことで、資金繰りしていると聞いた。幸いにも東京大学にはアメリカの大学に引けを取らない施設が整っていることが多いし、アメリカのような研究室破産が起きることはほとんどなく、「お金にならない」研究でも継続できることが可能だ。しかし、法人化されて少しずつ東京大学も変わってきているので、これがいつまで続くかはわからない。また、アメリカには修士課程はないが、日本には修士課程で実際に研究をしてみることで自分の適性を見極めることができる。アメリカの方が研究環境や教育環境でも優れていると信じ込んでいた自分にとっては、新鮮であった。そして同時に、individual visit で Prof.Thorner の研究室を訪問して、学部生や院生、ポスドクと話して、勉強している内容や1人1人の研究レベル、またライフスタイルも、さほど日本のそれと変わらないので驚いた。アメリカの中高時代はスポーツや音楽や遊びなどで忙しくて日本の学生とは全く違う生活を送るが、研究室の人々は夜まで研究するし、週末も研究しにくると聞いて、研究者を目指す学生に国境はないということを感じた。

最後に、自分が最も嬉しかったのは、自分と同年代のアメリカ人の大学生の生の声を聞けて、更に自分がどのように考えているかを教えられたことである。卒業後はメディカルスクールを目指す女の子や、日本でコンサルタントとして働く予定の男の子など、様々な学生に会ったが、結局悩んでることは日本の学生と同じであった。研究テーマの選び方から、研究者としての適性があるかどうか、自分がどのような仕事にやりがいを感じるのかなど。学生によって、自分の中でやりたいことが見つかっている人もいれば、まだまだ悩む人もいる。これは国に関わらず、みんなそうであった。3 年後に自分の居場所が確保できるかどうかわからないけど、研究は楽しいと言っているポスドクに会った。Stanfor dのキャンパスは絵に描いたように美しいし、UC Berkeley の総合図書館の大きさも圧倒的だが、そこで暮らす研究者や学生達は、意外と日本人と同じように悩んでいて、不安はありながらも毎日楽しんでいるということを知れただけで大きな収穫であった。

このような機会をくださった東京大学理学部、StanfordとUC Berkeley の教授・スタッフや学生、そして特に引率してくださった五所さんと一緒に参加した8 人の仲間には心から感謝したい。そして、この海外渡航制度が続き、多くの学部生の「きっかけ」となることを願っている。

木下 温子(生物学科植物学コース4年)

今回の海外渡航プログラムで、私たちはアメリカ合衆国に渡り、UC Berkeley と StanfordUniversity という2つの著名な大学を訪問し、多くのことを見、聞き、体験してきました。

私はこれまで観光目的で海外を旅したことはあったものの、学術的な目的での海外大学訪問や、同年代の学生とディスカッションは経験したことがなかったので、今回のプラグラムでの経験は新鮮なものばかりでした。


今年度の海外渡航プログラムの大きな特徴の一つとして、個人で研究室を訪問する"Individual Visit" が挙げられると思います。これは、各自が相手の大学で訪問したい研究室や講義を選び、訪問する企画で、研究室の PI に英語でメールを送ってアポイントメントをとったり、教授と1対1で向き合って質疑応答したり、自分が興味のある分野の研究室の現場を見学できたりと、今後研究者として生きていくために不可欠な活動を経験することができました。私は幸いにも5 つの研究室から訪問の承諾をいただき、新旧様々な研究室を見学しました。いずれの研究室のPI も、ご自身の研究内容や現在のテーマを選んだ動機、大学院での留学生の受け入れ態勢やアメリカの大学における教育制度など、私の質問に大変丁寧に答えてくださり、また研究室で学部4年生の学生やポスドクと話す機会も与えてくださいました。この訪問でうかがったお話の中で最も印象的だったのは、大学院の学費に関する日本とアメリカの違いです。日本では大学院の学費は学生に課せられており、学業の忙しさを考慮すると両親や貸与奨学金に頼らざるを得ないというのが実情で、私の周りでは研究を続けたいと思っていても大学院に進学することをためらっている学生が少なくありません。一方、アメリカの大学院では学費は所属する研究室のPI が負担し、その上学生には毎月20 万円程度の生活費が支給されるということで、金銭的な理由で大学院進学を躊躇する学生はあまりいませんでした。このようなシステムの違いは、経済面だけでなく、研究に対する心構え?学生気分で研究に取り組むか、投資を受けているという責務を感じながら取り組むか?という点でも大学院生の違いをもたらしているように思います。また、学生とのディスカッションも大変刺激的でした。"Individual Visit"やグループディスカッションでアメリカの学生と話し合う中で、彼らのディスカッション能力、プレゼンテーション能力の高さ、自分の意志を明示しようという姿勢や確立されたアイデンティティーに驚かされました。

今回の訪問で、私はアメリカの大学、研究室、教育制度や大学生の姿勢などの様子について知ることができただけでなく、今まで自分が慣れ親しんできた日本の環境や自分自身について見つめなおすことができました。このような実感は、実際に異なる環境に飛び込んでみて初めて得られるものだと思います。今後は、学費負担の違い、大学院生の意識、ディスカッション能力など、私が感じたことを多くの日本の学生に伝えていきたいと思います。



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